癒着どっとCOM 産婦人科編
INDEX
1.女性生殖器の構造
(1)子宮及び付属器の解剖図
(2)下腹部全体の断面図
2.癒着ってなに?
(1)癒着はどうして起こるの?
(2)癒着を起こさないために
3.帝王切開と癒着
(1)帝王切開ってなに?
(2)総出産数の15%は帝王切開
(3)帝王切開が必要な症例とは?
(4)どこに癒着が起きやすいの?
(5)帝王切開で生じる癒着の障害とは?
(6)反復帝王切開の癒着のリスク
4.産婦人科の手術
(1)癒着剥離(はくり)術
(2)腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術と癒着
(3)癒着防止材の紹介
5.癒着が気になる方へ
3.帝王切開と癒着
(1)帝王切開ってなに?
出産を間近に控えた女性にとって心配になるのが分娩方法です。誰もが赤ちゃんを安心して産みたいと願うのは当然のことです。妊婦は長い月日を赤ちゃんとともに過ごし、その間に体にかかる負担も大きいうえ、さらに出産という大仕事が待ちかまえているのです。

産婦人科の先生は、お母さんに安心して赤ちゃんを産んでもらうため、お母さんと赤ちゃんにとって最適な出産方法を選択します。多くの場合は経腟(けいちつ)的な自然分娩が選択されるかと思います。しかし、何らかの理由でお母さんや赤ちゃんが危険にさらされるのであれば、腹部と子宮の壁を切開して、赤ちゃんを取りだす帝王切開が選択されます。
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(2)総出産数の15%は帝王切開
 
日本で帝王切開の手術を受けた患者数は、2002年では総出産数約115万人のうち、15%にあたる約17万人でした。また、出産数は減少傾向にあるなか、帝王切開を行う割合は年々増える傾向がみられます。

帝王切開を行う率は、一般病院でも出産数全体の10〜20%、大学病院や周産期センターではリスクを抱えた妊婦さんが入院しているため15〜40%と高くなっています。
また、帝王切開を行う人の約40%が、過去に帝王切開を経験したことのある人(反復帝王切開)です。この時に注意しなければならないのが「前回の帝王切開による癒着」です。
出産数と帝王切開率の推移
『母子保健の主なる統計(H15年度版)』より引用改変
(各年9月1か月間の調査データを基に算出)
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(3)帝王切開が必要な症例とは?

帝王切開には、計画的に行う場合と緊急に行う場合があります。

予定帝王切開:

妊娠中から帝王切開が計画されること。

緊急帝王切開:

経腟分娩を予定していたのが、微弱陣痛などの理由により帝王切開に移行すること。帝王切開の方がお母さんや赤ちゃんの危険性が少ないと判断された場合に選択されます 。
●予定帝王切開が選ばれるケース
1) お母さん(母体)に合併症がある
2) 赤ちゃんの頭が、お母さんの骨盤に比べ大きい(児頭骨盤不均衡)
3) 胎盤が子宮口をふさいでいる(前置胎盤)
4) 逆子(骨盤位)
5) 多児妊娠
6) 前回、帝王切開をしている
7) 子宮筋腫核出術の手術を受けたことがある
8) 卵巣嚢腫(のうしゅ)や子宮筋腫(きんしゅ)があり、分娩が困難な場合
●緊急帝王切開が選ばれるケース
1) 胎児仮死が疑われる
2) 赤ちゃんが生れる前に胎盤がはがれる(常位胎盤早期剥離)
3) 重症妊娠中毒症
4) 陣痛開始から分娩までの時間が初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上(遷延分娩
5) 微弱陣痛
6) 赤ちゃんよりも臍帯(へその緒)が先に出てしまった場合(臍帯脱出)
7) 早く破水してしまい、お母さんや赤ちゃんに危険がある場合(前期破水)
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(4)どこに癒着が起きやすいの?

子宮、卵巣、卵管など女性の生殖器は、骨盤の中で膀胱と直腸に挟まれるように位置しています。帝王切開ではお腹の皮膚とお腹側の子宮壁を切開するため、その傷口に触れる膀胱や小腸との間で癒着を生じる可能性があります。

妊娠子宮の断面図

子宮を切開する方法はいくつかありますが、お母さんの合併症の有無、胎盤の位置、妊娠周期などを考慮して最適な術式が選択されます。特に子宮切開のパターン図(1)にあるように、子宮の付根(頸部)を横に切開する子宮下部横切開が多く選ばれており、癒着の可能性は比較的低いとされています。    
一方、赤ちゃんの状態によって、緊急を要する場合などでは図(2)、図(3)にあるように逆T字切開、子宮体部縦切開といった術式が選ばれますが、癒着の可能性は高くなります。

子宮切開のパターン図
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(5)帝王切開で生じる癒着の障害とは?
帝王切開はお腹と子宮を切開する手術ですので、一般の手術と同様に術後の癒着防止対策は大切な処置となります。癒着が起こると次のような障害が起きることがあります。
下腹部痛などの慢性的愁訴
腸管の蠕動(ぜんどう)運動の障害
不妊症
膀胱の機能障害
次に手術を行う時、癒着により手術操作が行いにくくなる
そのため産婦人科の先生は、癒着を防ぐために
確実に止血をする
吸収性の糸で縫う
お腹の内側をきれいに洗い流す
癒着防止材を使う
など十分注意して手術を行っています。
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(6)反復帝王切開の癒着のリスク
帝王切開自体は産婦人科では最も一般的な手術の一つですが、2回目以上の帝王切開(反復帝王切開)を行う人は、お腹の中で癒着が起きている可能 性があるため、より細心の注意を払って手術が行われます。

帝王切開の時に癒着があると、赤ちゃんを取りだすスペースをつくるために癒着をはがす操作が必要となります。これらの手術操作のために、お母さんからの出血量が増えたり、膀胱や腸が傷つくなど、術中・術後の合併症が増える可能性があります。また、赤ちゃんを取りだすまでの時間がかかり過ぎると、赤ちゃんの状態が悪くなる恐れもあります。

帝王切開を行ったとしても、次回の出産時に通常分娩が可能な場合もあります。医師の説明を聞き、十分相談したうえで分娩方法を決定してください。
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