ペントキサゾン
ペントキサゾンは、(財)相模中央化学研究所で合成され、科研製薬が開発したオキサゾリジンジオン系の水稲用除草剤です。1997年12月22日付けで単剤及び混合剤の登録が取得されてから、これまでに初期剤を中心に幾つかの水稲除草剤の混合母剤として利用されています。
ペントキサゾンは、ノビエ、コナギ、アゼナ類等の水田一年生雑草を中心に、多年生難防除雑草のクログワイを含む幅広い雑草に有効で、特にスルホニルウレア系除草剤に抵抗性を有するアゼナ類、コナギ類等に対しても安定した高い効果と残効性があります。
水稲に対する安全性も高く、初期剤としては移植前後での使用が可能で、一発剤では田植同時処理や最近では湛水直播における登録を取得した剤もあり、幅広い場面における使用が可能です。薬害は薬剤処理5日~10日後にイネの葉鞘部に軽い褐変症状が発現することがありますが、一過性で回復は早くその後のイネの生育に影響を与えることはほとんどありません。
ペントキサゾンは水溶解度が極めて小さく、土壌吸着性が高いため、地下水や河川等への流出がほとんど無く、しかも人畜・魚介類及び諸生物に対する毒性も低いため、環境に対する安全性が高い除草剤です。
成分の性状及び物理化学性
一般名 | ペントキサゾン(KPP-314) |
---|---|
化学式 | 3-(4-クロロ-5-シクロペンチルオキシ-2-フルオロフェニル) -5-イソプロピリデン-1,3-オキサゾリジン-2,4-ジオン |
構造式 | ![]() |
分子量 | 353.78 |
性状 | 白色無臭の結晶性粉末 |
密度 | 1.418g/cm3(25℃) |
融点 | 104℃ |
水溶解度 | 0.216ppm(25℃) |
土壌吸着係数 | Koc 3,190 |
特長
1.水田一年生雑草に著効
ペントキサゾンは10アール当たり15~45gaiが使用薬量です。処理薬量によって初期剤として、または一発処理剤の混合母剤として使用できます。
雑草に対してはノビエをはじめ、コナギ、ミズアオイ、ヘラオモダカ、アゼナ類、キカシグサ、ヒメミソハギ、タマガヤツリ等の一年生雑草に有効で、特に種子が小さい雑草に対し、雑草発生前~発生始期の処理で高い効果を示します。
2.残効性が長い
ペントキサゾンは高薬量(39~45gai/10a)で処理された場合、通常の条件下ではヒエを含む水田一年生雑草に対して50~55日以上の長い残効性を示します。
3.安定した除草効果
ペントキサゾンは水溶解度が低く土壌吸着性が強いため、土壌表層に安定した処理層を形成します。このため、土壌や気象などの諸条件による効果変動少なく安定した殺草効果を示します。
4.水稲に対して安全
土壌条件、温度条件、過漏水、浅植え、補植などによる薬害変動が少なく、安心して使用できます。
薬害の発生しやすい悪条件がいくつも重なった場合には、葉鞘褐変等の薬害が発生することがありますが、一過性でありイネに長期間影響を与えることはありません。
5.人畜・魚介類に対する安全性
ペントキサゾン原体の魚毒性試験結果
コイ | 7.58mg/L | LC50(96h) |
---|---|---|
オオミジンコ | 0.51mg/L | EC50(48h) |
藻類 | 1.31µg/L | EbC50(0-72h) |
ペントキサゾン原体の魚毒性試験結果
急性毒性 | 経口 | ラット(♂♀) | LD50 | >5,000mg/kg |
---|---|---|---|---|
経口 | マウス(♂♀) | LD50 | >5,000mg/kg | |
経皮 | ラット(♂♀) | LD50 | >2,000mg/kg | |
局所効果 | 眼 | ウサギ | 水和剤 刺激性なし | 粒剤 軽度の刺激性 |
皮膚 | ウサギ | 水和剤、粒剤刺激性なし | ||
皮膚感作性 | 皮膚 | モルモット | 原体 軽度の感作性 あり | 製剤 感作性なし |
変異原性 | 陰性 | |||
催奇形性 | 催奇形性なし |
6.環境に対する安全性
- ペントキサゾンは水溶解度が極めて小さく、土壌吸着性が強いため、水系への流亡や地下水への浸透移行性が少ないと考えられます。また、水田に施用された後は特に好気的な畑作条件下では比較的容易に化学的及び生物的な代謝分解を受け、最終的に炭酸ガスまで分解されるので、環境を汚染する可能性が低いと考えられます。
- 植物体への吸収移行性は極めて小さいので、作物残留の恐れはほとんどありません。
- 土壌中における分解も比較的早いため、長期に累積して残留することなく、代謝分解物による後作物への影響も認められていません。
生物活性
1.活性の範囲
ペントキサゾンは、ノビエ、タマガヤツリ、コナギ、アゼナ類等の一年生雑草全般に除草効果を示します。スルホニルウレア系除草剤抵抗性のアゼナ類やミズアオイ等にも有効です。本剤の使用適期は、雑草の発生前からノビエ1葉期までであり、水田雑草の発生初期の処理で最も高い除草効果が期待されます。
2.作用機作
ペントキサゾンは植物のクロロフィル生合成系のプロトポルフィリノーゲンⅨからプロトポルフィリンⅨに至る過程を触媒するプロトポルフィリノーゲンオキシターゼ(Protoporphyrinogen oxidase:Protox)という酵素を阻害します。生合成系を断たれたプロトポルフィリノーゲンⅨは非酵素的に酸化され、生合成系の中間体であるプロトポルフィリンⅨ(プロトⅨ)となって細胞中に蓄積します。このプロトⅨは明条件下で光増感作用により、植物細胞中に活性酸素を発生させ、これがチラコイド膜等の膜脂質の過酸化を引起し、細胞が破壊されて植物体が枯死すると考えられています。
3.選択性
ペントキサゾンは水溶解度が低く土壌吸着性が強いため、処理後に水中を拡散した後すみやかに土壌表層に吸着し、均一な薬剤処理層を形成します。移植水稲と雑草との間の選択性は、主としてこの薬剤処理層による位置選択性によるものと考えられます。土中の雑草種子が土壌表層で発芽する時、雑草の出芽部位が表層の薬剤処理層に位置するため、土壌表面の光条件下で強力な殺草作用を受けます。一方、移植水稲では、イネの成長点と根部が薬剤処理層よりも下方の土中に位置するために、薬剤の影響を受けにくくなっています。また、ペントキサゾンのイネ植物体中への吸収移行性も極めて小さいことから、薬剤処理層に接している部分からのイネへの影響も少ないと考えられます。

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